木を見て森も見る
『木を見て森も見る』
これはもちろん「木を見て森を見ず(事物の末梢的部分にこだわりすぎて、本質や全体をとらえられない)」と言う諺に掛けた言葉です。
先日こんなことがありました。
あるご利用者様、大腿骨の骨折で手術されその後リハビリを頑張ったため、なんとか歩けるようになりました。
ところがある日、お会いすると前週とは全く異なり歩けなくなっているではないですか!?
もちろん転倒した訳でもなく、風邪などで体調が優れない訳でもなくです。「足が出しにくい」とご本人様は言われています。
もしかして手術したところで何か起こったのか?とにかく言われた足を見ますが、特に変わったところは見られませんでした。
そこでもう一度歩いてもらいます。やはり足がうまく出ません。
でも歩く姿から、もしかしたら…と気付いたことがありました。
上半身の動きがぎこちないのです。
すぐに横になっていただき、腰から背中、首にかけてマッサージしてみます。一通りほぐしてみると先ほどまでの状態がウソのように一変、以前のように足も出せて、きちんと歩けるようになりました。
これは足のケガから、歩くときに無意識に全身に力が入ってしまい、それがうまく抜けないままになっていたため体の動きが制限されてしまってのことでした。
訴えは「歩けない」「足が出しにくい」なのですが、原因は足ではなく「背中の張り」でした。
このように、訴えているところと原因となっているところが異なることはよくあることです。私たちは言われたところはもちろん見ますが、同じように全身の状態も見ています。ご利用者様の疾患だけではなく、動き方のクセや考え方のクセなども参考にしながら原因を考えています。だから「木を見て森も見る」なのです。
みなさんも言われたところだけでなく、広い視野で見るように心掛けると本当の原因が見えるようになると思いますよ。恋人同士のように「何でこんなことを言うのかな?何を思っているのかな?」と考えることで優しく、気持ちよく介護・看護を続けることができるのではないでしょうか。