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精華苑のエビそば【世田谷の介護ヘルパーのグルメ 第22話 後編】

精華苑のエビそば【世田谷の介護ヘルパーのグルメ 第22話 後編】

精華苑のエビそば【世田谷の介護ヘルパーのグルメ 第22話 後編】

東京の世田谷で介護の仕事をしている清水です。

【世田谷の介護ヘルパーのグルメ】第22話の後編をお届けします。

前編では、くも膜下出血で救急搬送された母と福島の病院で再会するまでをお伝えしました。

執筆にあたっては、自身のスマートフォンの電話やメッセージアプリの発着履歴を確認しながら、事実関係を整理して行なっています。

しかしながら、当時の切迫した状況や、深夜の長距離移動による疲労により、履歴がない部分の記憶が事実と異なっている可能性もあります。

その点をお含みおきの上で、この記事を読んでいただけると助かります。

それでは、記憶がまだ鮮明なうちに、入院から母が亡くなるまでを綴ってみたいと思います。

11月27日 母のいない家

母との面会を終えて実家に帰る途中、私は兄と今後について話をしました。

福島県の私立学校で教師をしている兄から、27日にどうしてもやらなければならない仕事があると相談されたからです。

私は12月に喜多見で開設する新しい訪問介護事業所の準備を進める必要がありました。

『仕事をどうするか?』を考えるうちに、兄が運転する車が実家に着きました。

玄関から中に入ると、父は無人の家に向かって、何度も母の名前を呼びました。

虚ろな表情や声から、父の悲しみが痛いほど伝わってきました。

その姿を見て、『このまま父を独りにする訳にはいかない』と思いました。

母がくも膜下出血だと分かった時点で上司に休みの相談をしており、この時点で27日に休む内諾をもらっていました。

兄が仕事で不在の間、私が父と一緒に母の見舞いや医師との面談をすることにしました。

夜明け近くになって、実家の2階にあるかつての子供部屋で床につきました。

見覚えのある天井の模様を眺めながら、これからのことをあれこれ考えるうちにいつの間にか眠ってしまいました。

11月27日 母の余命

7時過ぎに目が覚めた私は、上司に連絡し正式に休みの許可をもらいました。

そして、父と兄と3人で朝食を摂り、仕事に出かける兄を見送りました。

病院の面会時間(14時〜16時)まで、私は母の荷物整理を行い、父は親類や交友関係に母の入院を電話で連絡しました。

14時に面会した母は、10時間前と比べて呼吸がとても苦しそうでした。

バイタルを見ると血中酸素飽和度は90%しかありません。

数値を見て、私は胸が張り裂けそうになりました。

その後に行われた医師との面談でも、良いニュースはひとつもありませんでした。

そうした厳しい状況でしたが、私は28日の未明に神奈川県の自宅に戻り、その日の午後に行われた会社の管理者会議に出席しました。

会社から出勤を促された訳ではありません。

あくまでも私の意思による行動です。

職場では平静を装っていたつもりでした。

しかし、事情を知っている倉田社長から声をかけられると、母の余命に対する私の本音と涙を隠すことは出来ませんでした。

母の命は風前の灯火でした…

11月30日 兄からの電話

その後しばらくの間、母の容体は安定していました。

決して良くはなっていないものの、何とか持ちこたえていてくれたのです。

しかし、小さな母の身体にいよいよ限界が訪れました。

11月30日(土)の19時27分、兄から電話がありました。

母の脈や呼吸が弱くなっているので、すぐに来るようにと病院から連絡があったそうです。

その報を受けてすぐ、神奈川県内にいた私は東京駅に向かいました。

電車移動の途中、19時55分にかかってきた兄からの電話で、母が亡くなったことを知りました。

実家から病院まで車で15分ぐらいの距離ですが、急いで駆けつけた父と兄も母の臨終には間に合わなかったそうです。

悲報を聞いた私は、新幹線に乗るために小田急線と地下鉄を乗り継ぎ、最後は東京駅の構内を無我夢中で走って新幹線の乗り場へ向かいました。

21時44分発の最終に飛び乗り、息を切らしたまま席に座りました。

予約した時に埋まっていた隣の席は、福島まで誰も乗ってきませんでした。

空席越しに車窓の夜景を眺めていると、母との思い出が次々と蘇ってきました。

11月30日 母の言葉

母は曲がったことが嫌いな人でした。

小学生の頃に点数の悪いテストを机に隠していたら、ひどく叱られました。

お調子者の自分にとって、母の厳格さが煩わしく感じることもありました。

そんな母との思い出の中で、忘れられない言葉があります。

大学1年の夏休み、私は高校の担任だった佐藤先生を尋ねました。

思い出話に花が咲き、先生から私が知らない母の話を聞いたのです。

高校3年の時、私は成績不振で卒業が危うい状態にありました。

工業高校の電気科在籍にも関わらず、肝心の専門教科はほとんど勉強せず、授業中は文系の大学入試に必要な英語と国語、社会(日本史)を独学で自習していました。

電気の勉強に数学の知識は必須ですが、中学の時に”ある理由”で数学を嫌いになってからずっと苦手科目のままでした。

そのため、成績は惨憺たる有様。

3年の定期試験では赤点続出で、0点を取る教科さえありました。

また、毎週行われる実習のレポートを12週分も溜めてしまっていました。

しかし、『常識的な行動では、自分の目標とする非常識な結果は得られない』と、当時の私は自分を正当化してラクな方へ逃げていました。

若気の至りとは言え、今にして思えば恥ずかしい限りです。

そんな私を心配した佐藤先生が、母を学校に呼んで面談していたのです。

「息子を信じてますから」

母はそう言ったと、先生は教えてくれました。

11月30日 母との別離

佐藤先生からその話を聞いて、私は魂を揺さぶられました。

学校に呼び出されたことなど、母はおくびにも出さなかったからです。

当時の私は、そんなこととは露知らず、我が道を貫いていました。

しかし、さすがに留年はマズいと思ったのか、3日寝ずに12週分のレポートを仕上げ、赤点科目は補習を受けて何とか卒業にこぎつけました。

相手を信じて待つことは、簡単ではありません。

その話を聞いて、私は”海のように深い”と喩えられる母親の愛情を実感しました。

そして、その想いを裏切ってはいけないと誓い、人生で苦境に立った時は母の言葉を心の支えにして乗り越えてきました。

23時半過ぎ、病院から葬儀場の安置室へと移った母に会うことができました。

最初に病室で見た時のように穏やかな表情でした。

まだ温もりが残っていて、パッと目を開けてくれそうな感じさえしました。

叶わぬ願いとは分かっていたものの、そのぐらい現実感がなかったのです。

そして、散々流したはずの、私の涙がまだ枯れていないことにも気づきました。

12月3日 母を偲んでの食事会

母の葬儀準備を進める中、父と兄、母の弟夫婦、私の5人で福島市大町にある中華料理店の精華苑に足を運びました。

母が好きだった料理を家族で食べるためです。

※当ブログでは世田谷の飲食店を紹介していますが、今回は”特例”としてご容赦ください

精華苑のエビそば

母は牛や豚、鶏などの種類に関わらず、肉を食べることが出来ませんでした。

その代わりに海鮮系が好きで、ハレの日に家族で利用した精華苑ではエビそばをよく注文していました。

喜多方で生まれ育った母は、麺類が好きでした。

そんな母を偲んで、父と兄と私の3人は、そのエビそばを注文しました。

運ばれてきた器を見て、ボリュームこそ増えているものの、記憶にある見た目と変わっていないことに安堵しました。

いざ食べてみると、自身の記憶にある味とリンクしており、基本的な味の組み立ても変わってはいませんでした。

亡くなる前に、このエビそばをひと口だけでも母に食べてもらいたかったです。

12月15日 後日談

葬儀の中で父は言っていました。

「母は気配りの人だった」と。

実は、12月1日は父の誕生日でした。

私が母の余命が僅かと悟った時、不肖付随である父の誕生日に母は逝くと予感していました。

実際は、その前日の11月30日に母は旅立ちました。

「誕生日を自分の命日にするのは申し訳ないと思ったんじゃないか」と、父は言っていました。

昏睡状態の母が日付を認識していたとは考えにくいです。

しかし、母をよく知る父に言われると、『案外そうかもしれないな』と思ってしまいます。

私の母はそんな優しい人でした。

さて、2回にわたる長文記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。

実際の体験を文章にまとめることで、気持ちの整理がついてきました。

今回の経験を介護職の仕事に活かすことが、母の供養になると信じて前に進んでいきます。

それでは、また次回の【世田谷の介護ヘルパーのグルメ】でお会いしましょう!

【店舗情報】

店 名:中国飯店 精華苑

住 所:〒960-8041 福島県福島市大町4-15

電 話:024-522-8317

時 間:ランチ:11:00~14:00(L.O) 夜:16:30~20:30(L.O)
※営業時間は変更になることがあります

定休日:日曜日

リンク:精華苑 食べログ

※2024年12月15日現在

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